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しびれ

 

しびれとは(総論)

診察

「しびれ」は大きく感覚の異常(ジンジン・ピリピリ・感覚が鈍い・触ると気持ち悪い 等)と、患者さんが「しびれる」と表現しがちな力が入らない(運動麻痺)の2種類が混在します。どちらも神経のどこか(脳・脊髄・神経根・末梢神経)のトラブルで起こります。

原因は多岐にわたり、脳卒中/TIAなど緊急性の高いものから、頸椎症・手根管症候群・糖尿病性神経障害・ビタミン欠乏のように適切な治療で改善しやすいものまで様々です。まずは危険な原因がないかを除外し、しびれの分布・きっかけ・随伴症状から部位を推定して治療につなげます。

こんなしびれはすぐ受診/救急要請

  • 突然片側の顔・腕・脚に起こるしびれ/脱力(言葉が出にくい・ろれつ不良・視力異常を伴う)
  • 進行性に悪化するしびれ・脱力、歩行障害やふらつきの進行
  • 排尿・排便の障害や会陰部のしびれ(馬尾症候群の可能性)
  • 頸・背部の激痛に続く両手足のしびれ/脱力
  • しびれに強い痛み・発熱・体重減少が伴う

ためらわず119番または救急外来へ。発症時刻・経過・内服薬をお伝えください。

症状の見分け方

しびれの出方でおおよそ分かること

分布・きっかけ 考えやすい部位 ポイント
片側の顔+腕(±脚)が突然 脳(脳卒中/TIA) 言語障害・視野異常・ふらつき同伴は要救急
首や腰の動きで悪化/走る痛み 神経根(頸椎・腰椎) 頸椎症・ヘルニア。咳や姿勢で悪化しやすい
手の親指〜中指のしびれ、夜明けに悪化 手根管(正中神経) 手を振ると軽快。物落とし・細かい作業困難
小指・環指尺側のしびれ、肘を曲げると悪化 肘部管(尺骨神経) 肘屈曲回避。握力低下・巧緻障害
首~肩~腕のだるさ/しびれ、荷物や姿勢で悪化 胸郭出口症候群(TOS) 鎖骨と肋骨の間で神経/血管圧迫。理学療法が有効
足先から左右対称にじわじわ進行 末梢神経(多発ニューロパチー) 糖尿病・アルコール・薬剤・ビタミン欠乏など
歩行時のふらつき+巧緻運動障害 小脳・脊髄後索 ビタミンB12欠乏・脊髄症など

上記はあくまで目安です。自己判断せずご相談ください。

主な原因と治療

中枢(脳)が原因

脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA)

  • 片側の顔・腕・脚の突然のしびれ/脱力、言語障害・視野障害・ふらつき。
  • 発症直後が勝負。救急要請し、CT/MRIで評価。脳梗塞は血栓溶解療法・血管内治療の適応検討。

脳腫瘍・炎症・多発性硬化症 など

  • 徐々に進むしびれ、頭痛・けいれん・視力障害など随伴。MRIで評価し、専門治療へ。

脊髄・神経根が原因

頸椎症性神経根症・頸椎椎間板ヘルニア

  • 首~肩~腕に放散する痛みとしびれ。咳・姿勢で悪化。
  • 治療:安静・装具・鎮痛薬・神経根ブロック。難治例は手術(前方除圧固定など)。

日常生活での注意点
  • 長時間同じ姿勢を避ける:デスクワークやスマートフォンのうつむき姿勢は首に負担をかけます。1時間に1回は休憩を取り、首や肩を軽く動かしましょう。
  • 枕の高さ・寝姿勢の調整:高すぎる枕やうつ伏せ寝は神経の圧迫を助長することがあります。首の自然なカーブを保てる枕を選んでください。
  • 重い荷物を避ける:片側だけで重いバッグを持つと頸椎に負担が集中します。リュックなどで両肩に均等に負荷を分散させる工夫が有効です。
  • 無理な運動や急な首の動きは控える:ゴルフやテニスなどで急に首をひねる動作は悪化の原因になりえます。再開は主治医の指示に従いましょう。
  • 姿勢改善と筋力維持:猫背を避け、背筋を伸ばして座る習慣を。肩甲骨や背中のストレッチ・軽い筋トレも再発予防に有効です。
  • 悪化時は早めに相談:しびれや痛みが強くなる、握力低下や箸が持ちにくいなどの症状が出た場合は早期受診が大切です。

頸髄症(脊髄の圧迫)

  • 両手の巧緻障害(ボタン掛け困難)、つまずき・ふらつき、膀胱直腸障害。
  • 進行性は手術検討。MRIで圧迫評価。

腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症

  • 坐骨神経痛(殿部~大腿~下腿~足)や間欠性跛行(歩くとつらく休むと軽快)。しびれ+痛みが主体。
  • 治療:保存療法(薬・理学療法・神経根/硬膜外ブロック)。麻痺進行・排尿障害・痛みが強く日常生活困難では手術検討。

日常生活での注意点(腰椎椎間板ヘルニア)
  • 前かがみ姿勢のやり過ぎに注意:顔洗い・歯磨き・荷物持ち上げは前屈せず、股関節と膝を曲げて近づく(ヒップヒンジ)。
  • 座る時間はこまめに分割:長時間の座位は椎間板圧を高めます。30~45分ごとに立ち上がり1~2分歩く
  • 椅子とデスク環境:腰に小さなクッション(ロールタオル)で**腰椎前弯を軽く保持**。座面は深く、足裏は床に全接地。
  • 持ち上げ/持ち運び:物は体に近づけて抱え、ねじりながら持ち上げない。重い物は複数回に分けるか台車を使用。
  • くしゃみ・咳:立位か横向きで腹圧を逃がす。前屈したままの咳は避ける。
  • 睡眠姿勢:仰向け時は膝下に枕/クッション、横向きなら膝の間に枕で**腰の反り・ねじれを低減**。
  • 運動再開の目安:痛みが落ち着けば、平地歩行10~20分×1–2回/日から。ジョギング・高負荷筋トレは段階的に。
  • してはいけない「急な前屈+回旋」:掃除機を遠くに伸ばしてかける、車の後部座席からひねって荷物を取る等は悪化要因。

日常生活での注意点(腰部脊柱管狭窄症)
  • 「少し前かがみ」で歩く:ショッピングカートや杖を利用。痛みが出る前に短く休むインターバル歩行が有効。
  • 自転車/エアロバイクは相性◎:前傾で神経の圧迫が和らぎやすい。負荷は会話できる程度から。
  • 上を見る動作の連続は控える:洗濯物干し・高所作業などの反り返りは症状を誘発。作業は分割。
  • 階段は手すりを使用:一段ずつ、前傾姿勢で体幹を安定。
  • 座位の工夫:浅掛けはNG。坐骨で座り、必要に応じて**前屈みで一時的に休める椅子**を選ぶ。
  • 就寝時:横向きで軽い前屈姿勢(膝を少し抱える)。仰向けは膝立てクッションで腰の反りを減らす。

セルフケア(痛みが強い時は無理に行わない)
  • 体幹安定化(ドローイン):鼻から吸って、口すぼめで吐きながらお腹を軽く凹ませ5秒×10回。立位/座位/仰臥位で。
  • ハムストリング・殿筋の軽いストレッチ:いずれもしびれが脚へ強く走るなら中止し相談。
  • 温冷:筋緊張が強い朝は温め、活動後の疼痛増悪には短時間のアイスパック(10–15分)。皮膚障害に注意。
  • 体重管理と禁煙:体重増加と喫煙は椎間板/骨の血流・栄養を損ね悪化要因。可能な範囲で改善を。

受診の目安(このような時はすぐ相談)
  • 排尿・排便障害、会陰部のしびれ(馬尾症候群の可能性)。
  • 発熱やがん既往・ステロイド長期内服があり腰痛が急速に悪化。
  • 痛み/しびれが日常生活を妨げる強度で2–4週間以上続く、または筋力低下(つま先立ち・踵立ちができない)。

馬尾症候群

  • 会陰部のしびれ、排尿排便障害、両側下肢症状。緊急手術を要することあり

末梢神経(絞扼・外傷)

  • 手根管症候群(正中神経):親指~中指のしびれ、夜明けに悪化。装具・注射・手術。
  • 肘部管症候群(尺骨神経):小指・環指のしびれ、肘屈曲で悪化。装具・手術。
  • 胸郭出口症候群(TOS):鎖骨と第1肋骨間で神経/血管圧迫。姿勢改善・理学療法・ブロック、難治例は手術。
  • 橈骨神経麻痺/腓骨神経麻痺:圧迫後に下垂手/下垂足。圧迫回避・装具・理学療法、自然回復を待つ。
  • 足根管症候群:足底の灼熱痛・しびれ。インソール・注射・手術。

末梢神経(びまん性)

糖尿病性神経障害

  • 足先から左右対称に進むしびれ・灼熱痛・感覚低下。自律神経症状(立ちくらみ・発汗異常)を伴うことも。
  • 治療:血糖コントロール、疼痛治療(プレガバリン/デュロキセチンなど)、足病変の予防。

アルコール・薬剤性(抗がん剤など)・腎不全

  • 手袋靴下型のしびれ。原因薬の見直し・原病の治療・疼痛コントロール。

ビタミン欠乏(B1・B12 など)・甲状腺機能低下

  • B12欠乏はしびれ+歩行バランス障害(後索障害)。補充で改善が期待。

自己免疫性(ギラン・バレー症候群/CIDP など)

  • 急性~亜急性のしびれ+脱力が進行。入院のうえ免疫療法(免疫グロブリン・血漿交換等)。

しびれに似た症状(循環の問題)

  • 末梢動脈疾患(PAD):歩くとふくらはぎが痛く休むと軽快。冷感・蒼白。血管評価が必要。
  • レイノー現象:寒冷で指が白→紫→赤に変色しジンジン。保温・誘因回避が基本。

診察・検査の流れ

初診でうかがうこと

  • いつから/突然か徐々にか、持続か断続か
  • 分布(片側・左右対称・指のどこからどこまで)と悪化/軽快因子(姿勢・首/腰の動き・夜間・冷え)
  • 随伴症状:脱力、痛み、ふらつき、視覚・言語、排尿/排便、しもやけ様変化
  • 既往歴:糖尿病・甲状腺・腎不全・自己免疫・がん治療歴・飲酒・栄養
  • 内服薬・サプリ(抗がん剤、抗けいれん薬、ビタミン剤の有無)

検査

  • 神経学的診察(感覚・筋力・反射・協調運動・歩行)
  • 血液検査:血糖/HbA1c、ビタミンB1・B12、甲状腺機能、腎肝機能、電解質 など
  • 画像検査:頭部MRI(中枢原因)、頸椎/腰椎MRI(神経根・脊髄)、超音波(血管)
  • 電気生理:神経伝導検査・筋電図(絞扼神経・多発ニューロパチーの評価)

日常生活の工夫

  • 頸椎・神経根:長時間同一姿勢を避け、モニター高さ・枕を調整。無理な首の伸展は控える。
  • 手根管:夜間装具、手首の過度屈曲を避ける、反復作業は休憩。マウスやキーボードの位置調整。
  • 胸郭出口:猫背改善、肩甲帯ストレッチ、重い肩掛けバッグを避ける。
  • 糖尿病性:血糖管理、禁煙、足の観察(胼胝・傷)、合う靴・フットケア。
  • ビタミン欠乏:バランスの良い食事、過度の飲酒を控える。
  • 寒冷暴露:レイノー体質は保温手袋・カイロ、急な温度差を避ける。

受診の目安・当院のご案内

医師

しびれは原因により緊急度が大きく異なります。突然の片側しびれや脱力排尿障害しびれが進行する場合は、すぐにご相談ください。命に関わる疾患ではないことを検査で確認したうえで、原因部位に応じた治療(薬物療法、理学療法、装具、注射/ブロック、必要時は手術連携)をご提案します。

当院では神経内科/脳神経外科の視点から、MRI・神経伝導検査・血液検査を組み合わせて診断精度を高め、再発予防と生活の質(QOL)の維持まで伴走します。お気軽にご相談ください。

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