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物忘れ

物忘れの道しるべ(はじめての方へ)

「どこまでが加齢の“うっかり”で、どこからが病気なの?」という疑問に答えるため、段階ごとに読み進められる道しるべを用意しました。ご自身がどこに当てはまるかを確認し、次のステップをご覧ください。

物忘れとは(総論)

まず知ってほしいこと

  • 加齢に伴う「うっかり」と、病気による認知症は違います。
  • 見分け方の軸は、日常生活に支障が出ているかどうか。
  • 支障が出ていない場合は「加齢」やMCI(前段階)であることも。早めの評価で対応の選択肢が広がります。

加齢による物忘れ

特徴

  • 人名・単語が出づらいが、ヒントがあれば思い出せる
  • 予定や持ち物をメモやスマホで補えば普段通りに暮らせる
  • 「置いた場所を忘れる」はあるが、体験自体を丸ごと忘れることは少ない。

心配が続く場合は、次の段階のMCIも確認しましょう。

MCI(軽度認知障害)

「正常」と「認知症」のあいだ

  • 生活はほぼ自立しているが、検査で客観的な低下が見える状態。
  • 時に体験した出来事そのものを忘れてしまうことがある。
  • 全員が認知症になるわけではないが、進行リスクが高いグループが含まれる。
  • 運動・食事・睡眠・社会活動で改善が期待でき、定期チェックが大切。
  • アルツハイマー病理(アミロイド陽性)があるアルツハイマー病によるMCIでは、抗Aβ抗体薬による治療の対象になり得ます。

くわしい内容や検査・対応は、この下の既存セクションに続きます。

認知症とは

特徴

  • 日常生活に支障が出ている状態が「認知症」と呼ばれます。
  • 記憶だけでなく、注意力・言語・判断力・行動など複数の機能が影響を受けることがあります。
  • 進行性の変性疾患血管障害が主な原因ですが、治療で改善できる「可逆性認知症」もあります。
  • 早期に診断し、治療や支援を組み合わせることで、進行を遅らせ生活の質を保つことが可能です。
  • 運動・食事・睡眠・社会活動による生活習慣の改善は、認知症でも大切です。
  • アルツハイマー型やレビー小体型では、従来の抗認知症薬(内服薬)が有効な場合があります。
  • さらに、軽度のアルツハイマー型認知症では、抗Aβ抗体薬による治療が適応となる場合もあります。

次に、代表的な認知症のタイプを見ていきましょう。

代表的な認知症のタイプ

分類の考え方(患者さん向けに簡潔に)

同じ方にいくつかのタイプが重なることも珍しくありません(混合型)。

可逆性認知症

代表例とチェック項目

原因 所見のヒント 検査 治療
正常圧水頭症(iNPH) 歩行障害・尿失禁・認知低下(三徴)。磁石歩行。 MRIで側脳室拡大、DESH所見。髄液タップテスト。 シャント術で改善が期待。
甲状腺機能低下症 易疲労・体重増加・寒がり・浮腫。 TSH/FT4。 ホルモン補充。
ビタミン欠乏(B12/葉酸) しびれ・貧血・うつ様症状。 血算、B12、葉酸。 補充療法。
薬剤性(抗コリン薬・ベンゾ等) 開始/増量と同期した注意低下・ふらつき。 服薬レビュー。 減量・中止の検討。
睡眠時無呼吸症候群 日中傾眠・いびき・無呼吸の目撃。 睡眠検査。 CPAP、減量、鼻治療。
うつ病(仮性認知症) 意欲低下・自己評価の低さ・朝方不調。 抑うつ評価、経過観察。 抗うつ療法、心理社会的支援。
感染・炎症・その他 甲状腺炎、梅毒/HIV、自己免疫脳炎、慢性硬膜下血腫、肝腎障害など。 採血・画像・必要時髄液。 原因治療。

まずは可逆性の要因を丁寧に除外・治療します(例:慢性硬膜下血腫は手術で改善することがあります)。

治療・対応の選択肢(段階別ダイジェスト)

認知機能の段階(MCI/軽度認知症/中等度以上)と、 原因となる病気(アルツハイマー病/レビー小体病)によって、 適応となる治療は異なります。

ここでは、現在行われている代表的な治療を 「どの段階で、どの病気に使われるか」という視点で整理します。

治療適応の全体像(段階 × 原因疾患)

※ アルツハイマー病の場合

  • MCI疾患修飾療法(抗Aβ抗体薬)のみ
  • 軽度認知症抗Aβ抗体薬従来の内服薬
  • 中等度以上従来の内服薬のみ

※ レビー小体病の場合

  • 軽度認知症以上従来の内服薬
  • 抗Aβ抗体薬は適応なし
段階 アルツハイマー病 レビー小体病
MCI 抗Aβ抗体薬:○
従来の内服薬:-
従来の内服薬:-
抗Aβ抗体薬:-
軽度認知症 抗Aβ抗体薬:○
従来の内服薬:○
従来の内服薬:○
抗Aβ抗体薬:-
中等度以上 従来の内服薬:○
抗Aβ抗体薬:-
従来の内服薬:○
抗Aβ抗体薬:-

※ 抗Aβ抗体薬は、アルツハイマー病が原因であること (アミロイドβ陽性の確認など)が前提となります。

① 生活習慣と合併症の整え(すべての段階で共通)

  • 運動・食事・睡眠・社会活動の見直しは、 MCIから認知症まですべての段階で重要な治療の土台です。
  • 難聴、抑うつ、睡眠障害、視力低下などを治療することで、 「認知症が悪化したように見えていた状態」が改善することがあります。

② 疾患修飾療法(抗Aβ抗体薬)【アルツハイマー病:MCI~軽度】

  • レカネマブ/ドナネマブ: アルツハイマー病によるMCI~軽度認知症が対象。
  • 治療開始前にアミロイドβ陽性の確認が必要です。 治療中はMRIによるARIAの監視を行います。
  • 症状を改善する治療ではなく、 病気の進行をゆるやかにすることを目的とします。

ARIA(アミロイド関連画像異常)とは、 脳のむくみや小さな出血などが起きていないかを MRIで確認する安全管理項目です。

③ 従来の内服薬(対症療法)【軽度認知症以上】

  • コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル等)、 メマンチンは認知機能や生活機能を支えます。

※ 高齢者では慎重な判断が必要

  • 効果が限定的になる一方で、副作用の影響が大きくなります。
  • 食欲低下、体重減少、徐脈、転倒、眠気、せん妄などが問題となることがあります。
  • そのため、使用しない・減量・中止を選択することも治療の一部です。

生活習慣、合併症管理、安全対策、家族支援、意思決定支援など、 すべての段階で共通して重要な内容は 治療・ケアの基本 にまとめています。

 

次の一歩

「自分はどの段階かな?」と思ったら、診断の流れご相談をご覧ください。早期に評価することで、選べる治療や支援が増えます。ご家族からのご相談も歓迎しています。

 

診断の流れ

評価と検査

  • 問診・情報提供:発症時期、経過、日常の困りごと、睡眠・幻視・転倒、薬剤歴。
  • 認知機能検査:MMSE、HDS-R、MoCA、FAB、語流暢性検査など。
  • 画像検査:頭部MRI、必要に応じて脳血流SPECT。
  • 鑑別のための採血:甲状腺・B12/葉酸、炎症・感染、代謝。
  • (必要時)バイオマーカー:アミロイドPET/髄液、血液Aβ関連検査(いずれも特殊検査です)。

代表的な認知症

認知症には大きく分けて、脳の神経細胞がゆっくり変性していくタイプ(変性性認知症)と、 脳の血管の障害に伴って起こるタイプ(血管性認知症)があります。
変性性認知症にはアルツハイマー型(AD)・レビー小体型(DLB)・前頭側頭型(FTD)・嗜銀顆粒性(AGD)などが含まれます。
一方で血管性認知症(VaD)は変性性ではありませんが、臨床でよくみられる代表的な認知症であり、ここに併せて解説します。

アルツハイマー型認知症(AD)

特徴

  • 初期から新しいことを覚えにくい(エピソード記憶障害)が目立つ。
  • 時間→場所→人物の順で見当識障害が進みやすい。
  • 進行に伴い、言語・視空間認知・実行機能も低下。

画像/補助所見

  • MRIで内側側頭葉(海馬)萎縮、側頭頭頂連合野の萎縮。
  • SPECTで頭頂・側頭連合野の血流低下。

薬物療法(対症)

  • コリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン。
  • NMDA受容体拮抗薬:メマンチン。

病期・副作用を見ながら個別最適化します。

疾患修飾療法(初期例で適応)

  • アルツハイマー病によるMCI~軽度アルツハイマー型認知症の段階では、抗Aβ抗体薬(レカネマブ:レケンビ®/ドナネマブ:ケサンラ®)による治療が保険適用です。
  • 実施にはアミロイド陽性(PET/髄液/血液バイオマーカー等)の確認と、MRIでのARIA監視など安全管理が必要です。
  • ARIAは「脳のむくみや小さな出血」が画像で見つかる副作用の総称です。多くは軽症・一過性で経過観察になりますが、頭痛・ふらつきなど気になる症状が出たらすぐご連絡ください。
  • 効果は進行速度の抑制であり、症状を元に戻す治療ではありません。生活介入(運動・食事・睡眠・社会参加)との併用が重要です。
  • 詳しくは下記「疾患修飾療法(抗Aβ抗体薬)」をご覧ください。当院で適応評価と連携調整を行います。

レビー小体型認知症(DLB)

中核症状

  • 注意・覚醒レベルの変動具体的な幻視パーキンソニズムレム睡眠行動異常(RBD)

画像/補助所見

  • SPECTで後頭葉(視覚連合野)血流低下
  • 心筋MIBGシンチの集積低下が診断補助。

治療と注意点

  • ドネペジルが日本で適応。認知・幻視に有効なことがあります(個人差があります)。
  • 抗精神病薬過敏:定型・一部非定型で重篤副作用の恐れ。極力回避し、必要時は専門医管理・最少量で。
  • 抗パーキンソン病薬幻覚・妄想が悪化する場合があり、使い方に注意が必要です。

前頭側頭型認知症(FTD)

臨床型

  • 行動変異型(bvFTD):脱抑制、常同行為、共感性低下、食嗜好変化。
  • 原発性進行性失語(PPA):意味変異・非流暢/文法性変異・ロゴペニック変異。

画像/補助所見

  • MRIで前頭葉・側頭極の左右非対称な萎縮、SPECTで前頭側頭血流低下。

治療のポイント

  • 中核改善効果は限定。SSRI等で行動症状緩和を図る。
  • 作業・言語療法、環境調整、介護者支援が中心。
  • 一部で遺伝的要因(例:MAPT、GRN、C9orf72)が関与します。家族歴が気になる場合はご相談ください。

嗜銀顆粒性認知症(Argyrophilic Grain Disease: AGD)

特徴

  • 超高齢発症(80歳前後に多い)、緩徐進行。
  • 辺縁系優位のタウオパチー。しばしば他病理(ADなど)と混在します。

画像/対応

  • MRIで内側側頭葉萎縮が目立つことも。確定診断は困難。
  • 対症療法と生活機能の維持を重視。過鎮静・多剤併用を回避

血管性認知症(VaD)

特徴

  • 脳梗塞・微小出血・白質病変などの血管障害が原因。
  • 階段状の悪化や遂行機能低下・歩行障害・感情失禁が目立つ。
  • ADとの混合型も多く、両方に対する対応が必要なことがあります。

画像/補助所見

  • MRIでラクナ梗塞、深部/皮質下白質病変、微小出血。

治療のポイント

  • 二次予防:降圧・糖脂質管理・抗血小板薬の適正化・禁煙・運動など生活習慣病の管理が最重要です。
  • 混合型ではAD治療薬併用を検討。

主要疾患の鑑別表

主要症状の比較
疾患 初期の主症状 特徴的サイン MRI/機能画像 薬物反応・注意点
アルツハイマー型(AD) 新しい記憶が保てない(記銘力低下) 時計描画・言語想起の低下、見当識障害 海馬・側頭頭頂萎縮、連合野血流低下 ChE阻害薬/メマンチン有用。抗コリン薬は避ける。
レビー小体型(DLB) 注意の変動、見え方の異常、転倒 具体的幻視、RBD、パーキンソニズム、MIBG低下 後頭葉血流低下、海馬萎縮は軽度〜不均一 ドネペジル適応。抗精神病薬過敏に要注意。
前頭側頭型(FTD) 人格・社会性の変化/言語障害 脱抑制、常同行為、食嗜好変化;PPA各亜型 前頭・側頭極の左右非対称萎縮 ChE阻害薬の効果限定。SSRI等で行動症状緩和
血管性(VaD) 階段状悪化、遂行機能低下、歩行障害 感情失禁、局在徴候、脳血管危険因子 ラクナ梗塞・白質病変・微小出血 二次予防が柱。混合型ではAD薬併用を検討。
嗜銀顆粒性(AGD) 緩徐な記憶低下、実行機能の軽度低下 超高齢発症、混合病理の併存が多い 内側側頭葉優位の萎縮(変動) 対症療法中心。多剤投与・過鎮静を避ける。

※同じ方でも病理の混在は珍しくありません。定期評価で方針を調整します。

疾患修飾療法(抗Aβ抗体薬)

概要

  • アルツハイマー病の原因蛋白アミロイドβ(Aβ)を標的とし、脳内Aβを除去して進行を緩やかにすることを目指す点滴薬。
  • アルツハイマー病によるMCI〜軽度アルツハイマー型認知症が対象。アミロイド陽性の確認(PETまたは髄液バイオマーカー)が前提。
  • 代表薬:レカネマブ(レケンビ®)ドナネマブ(ケサンラ®)(国内ではMCI/軽度ADに保険適用)。

導入までの流れ

  1. 診断確証:臨床評価+MRI、必要に応じてSPECT。
  2. バイオマーカー:Aβ陽性の確認(PET/CSF/血液)。
  3. リスク評価:APOE ε4(保因でARIAリスク高)、抗凝固薬内服、微小出血の既往など。
  4. 共有意思決定:効果の大きさ・通院負担・副作用(ARIA)を丁寧に説明。

投与とモニタリング

  • 点滴投与(通常2~4週ごと)。スケジュールは薬剤で異なる。
  • MRIモニタリング:導入前、初期(例:3か月・6か月)および症候時に実施し、ARIA(Aβ関連画像異常:脳のむくみや小さな出血)を監視。
  • 注意症状:新規の頭痛・意識変容・めまい・視覚症状・けいれん。出現時は速やかに連絡+評価。

適応外・慎重投与の目安

  • 中等度〜高度の認知症、制御不良の出血傾向、広範な微小出血や表在性鉄沈着。
  • 抗凝固薬使用中は原則慎重(出血リスク評価が必須)。

期待できる点・限界

  • 認知・機能低下の速度を抑制するエビデンス。
  • 症状を元通りに回復させる治療ではないため、早期導入と生活介入の併用が重要。
  • 治療に伴う不安や負担感がある場合は、ご家族・医療者と一緒に気持ちのケアも行います。

当院では、適応の有無を評価し、必要に応じて連携施設でのバイオマーカー検査・導入を調整します。

治療・ケアの基本

共通の方針(どの段階でも大切)

  • 生活習慣(脳と血管を守る)
    有酸素運動(歩行など)・筋力トレーニング、地中海食/DASH寄りの食事、社会参加、十分な睡眠を整えます。
    生活習慣はMCIから認知症まで共通して効果が期待できる「土台」です。
  • 合併症の見直し(「認知症のように見える」状態を減らす)
    難聴・視力低下・抑うつ・睡眠障害は、認知機能の低下を強く見せたり、日常生活の困りごとを増やします。
    治療や補聴器・眼鏡の調整で、認知の見え方が改善することがあります。
  • 薬物療法は「少量から・定期的に見直す」
    体重減少、ふらつき、せん妄、徐脈などの副作用が出やすいため、開始後も効果と副作用をセットで評価します。
    抗コリン作用のある薬(一部の睡眠薬、抗アレルギー薬、過活動膀胱治療薬など)は認知に影響することがあるため、原則回避または減量を検討します。
  • 安全(転倒・事故)を最優先に
    転倒は入院や寝たきりのきっかけになり、認知症の進行を早めることがあります。
    家の環境調整(段差・手すり・照明)、歩行補助具の検討、薬の整理などでリスクを下げます。
  • 家族・介護者支援(長く続くケアの要)
    介護負担の軽減、サービス連携(ケアマネ・訪問看護・デイ等)、困りごとの見える化を行います。
    ご本人の希望を中心に、家族と一緒に現実的なケアプランを作ります。
  • 意思決定支援(将来の見通しを共有)
    「今できること」と「今後起こり得ること」を整理し、ご本人の価値観に沿って治療・生活の方針を決めます。
    運転、仕事・家計管理、同居・介護体制など、早めに話し合うほど選択肢が広がります。

※治療は「薬だけ」で決まるものではありません。生活・合併症・環境・支援を整えることで、症状と生活の質(QOL)を大きく改善できることがあります。

生活習慣の目安(まずはここから)

  • 運動:週3〜5日、合計150分/週を目標(早歩きなど)。可能なら週2回の筋トレも。
  • 食事:野菜・豆・魚・ナッツ・オリーブオイル中心、塩分と加工食品・甘い飲料を控えめに。
  • 睡眠:7時間前後を目安。いびき・無呼吸が疑われる場合は評価します。
  • 社会参加:会話、趣味、ボランティア、学習など「人と関わる活動」を継続。

合併症チェック(よくある見落とし)

  • 難聴:補聴器の導入で会話量が増えると、認知の負担が減ります。
  • 視力:白内障・緑内障などの治療で生活が安定することがあります。
  • 抑うつ:意欲低下や集中力低下が「物忘れ」に見えることがあります。
  • 睡眠障害:不眠、睡眠時無呼吸、レム睡眠行動障害などを評価します。
  • 薬剤:抗コリン作用薬、鎮静系の薬、アルコールの影響を見直します。

物忘れ・認知症でお困りの方へ

当院では、問診・認知機能検査・MRI/必要時SPECTに加え、バイオマーカー評価疾患修飾療法の適応検討まで一貫してサポートします。治療や検査に不安がある場合は、医師・看護師が丁寧にご説明します。まずはお気軽にご相談ください。

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